毎月、広告費を払い続けている。止めた月だけ、問い合わせがぴたりと止まる。そんな経営を何年も続けている社長は少なくない。従業員は数名からせいぜい数十名で、マーケティングの専任者はいない。広告代理店に言われるまま予算を積み、成果が出ればひと安心、止めれば振り出しに戻る。この繰り返しに、そろそろ違和感を持っている経営者に向けて書く。結論を先に言うと、広告は止めれば消えるが、検索で見つかる記事は残る、ということだ。
「集める」と「刈り取る」は別の仕事
以前は「集客」と「営業」を同じ話としてまとめて考えてしまいがちだった。しかし整理してみると、この2つはまったく別の仕事だとわかる。
集客の役割は、興味を持ってくれそうな人を増やすことにある。広告を出す、検索で見つけてもらう、SNSで知ってもらう。すべて「集める」側の仕事だ。
一方、営業の役割は、集まった人の中から実際に契約してくれる人を見つけ出すことにある。これをある講座の講師は「刈り取り」と表現していた。乱暴な言い方に聞こえるかもしれないが、感覚としては近い。100人集めても、そのまま100人が契約してくれるわけではない。一般的には、集まった人のうちごく一部しか契約に至らないと言われている。
この2つを混同すると、「広告を出しているのに売れない」という誤解が生まれる。広告は集める仕事しかしていないのに、刈り取りの成果まで期待してしまうからだ。まず集客と営業を別の工程として切り分けて考えるところから、話が整理される。
広告が止まった瞬間に消えるもの
検索連動型の有料広告は、入札の仕組みで成り立っている。同じキーワードを狙う会社が増えるほど、1クリックあたりの単価は上がっていく。参入が増えるほど、同じ掲載順位を維持するコストが膨らんでいく構造そのものは、今も変わっていない。
ここに広告の限界がある。効果が出ている間はいいが、支払いを止めた瞬間、その広告枠は競合に明け渡される。積み上げてきたはずの露出は、翌月には跡形もなく消える。
中小企業や個人事業主にとって、広告予算を継続的に大きく確保するのは簡単ではない。予算にも限りがあるし、運用を専任で担当する人を置く余裕もない。だからこそ、広告だけに集客を頼る設計は、そもそも無理があると考えたほうがいい。
検索で見つかるコンテンツは、資産として残る
広告と対になるのが、コンテンツを使った集客だ。ブログ記事やSNSの投稿、動画など、読み手の役に立つ情報を発信し、検索や口コミを通じて見つけてもらう方法である。
検索エンジンは、検索した人の悩みを解決できる情報を評価すると言われている。情報の量だけでなく、書き手がその分野に詳しいかどうか、内容が信頼できるかどうかも見られているようだ。断定はできないが、専門性や実績を示す書き方をしたページのほうが、上位に表示されやすい傾向があるとされている。
広告と決定的に違うのは、この記事という資産が「残る」ことだ。1本書いた記事は、公開しておけば何か月も何年も、検索から人を連れてきてくれる。支払いを止めたら消える広告と、書いておけば働き続ける記事。この差が、広告を止めても客が来る会社と、止めたら来なくなる会社を分けている。
まず決めるのは、目的とターゲットの2つ
コンテンツで集客をしようと思っても、いきなりたくさんの記事を用意する必要はない。むしろ最初に決めるべきことは2つしかない。
1つは、何のために発信するかという目的だ。会社や商品の認知度を上げたいのか、実店舗への来店を増やしたいのか、採用のためなのか。目的によって、書く内容も置き場所も変わってくる。
もう1つは、誰に読んでもらい、読んだ後にどんな行動をしてほしいかという、ターゲットと行動の設計だ。1つのアカウントや1つのブログで複数の商品やサービスを同時に発信すると、誰に向けた情報なのかがぼやけてしまう。まずは1つの商品、1つの読者像に絞って書いてみるところから始めるとよい。
理想の顧客像は、描きすぎなくていい
集客の設計をしていると、よく出てくるのが「ペルソナ」という言葉だ。理想の顧客像を、年齢や家族構成、勤め先まで細かく設定していく手法のことを指す。
住宅を建てる会社を例にすると、地域と年代だけでなく、「30代前半の夫婦、子どもは2歳、共働き」というところまで具体的に描いていく。ここまで細かく決めておくと、SNSでどんな内容を発信すればいいかが決めやすくなるのは事実だ。
ただし、ここで注意したいことがある。もともとの顧客の母数が少ない会社が、根拠の薄いペルソナを作ってしまうと、間違った方向にそのまま引きずられてしまう危険がある。会社の規模がまだ小さいうちは、ペルソナを厳密に作り込むよりも、「今来ているお客さんに一番近い人」を思い浮かべる程度で十分なことも多い。決めること自体が目的にならないよう、気をつけたい。
広告を止めたら客が来なくなる会社と、来る会社の差は、才能でも予算の大きさでもない。検索で見つかる記事を、自分の会社の資産として積んでいるかどうかだけだ。今月、まずは1つテーマを決めて、1本書いてみることから始めてほしい。それが来月以降、広告を止めても止まらない集客の最初の1本になる。
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