私は長いあいだ、商品の説明は相手の顔を見ながらその場でするものだと思っていました。ところが、自分が商談で話している中身を書き出してみると、相手が変わっても変わらない部分がほとんどでした。会社の成り立ち、扱っているものの中身、進め方の全体像。相手の数だけ、同じ話を繰り返していたことになります。
変わらない部分は、一本の動画に話させることができます。ここで問題になるのは、どこまでを動画に任せて、どこから人が出るかの線引きです。
一番説明の上手い人の話し方を、置いておける形にする
社内に、同じ商品でもよく決めてくる人がいる会社があります。その人の説明には、本人も意識していない順番があります。どこから入るか、どの例を出すか、どの疑問に先回りして答えているか。
これを録っておくと、担当者が誰であっても、同じ水準の説明を相手に届けられます。人の中にあったものが、置いておける形になる。大きな会社が費用をかけてやることだと思われがちですが、必要なのは撮ることと、話す順番を決めることだけです。
人と違って、動画は疲れませんし、都合で急に出られなくなることもありません。説明の質が、その日の体調や担当者の経験に左右されなくなります。
動画に任せる話と、人が出る話
私はこの線を、相手によって中身が変わるかどうかで引いています。
動画に向くのは、誰に見せても同じになる話です。会社の説明、扱っているものの中身、始めるまでの流れ、よく聞かれることへの答え。ここは一度きちんと作れば、あとは同じものを使い回せます。
人が出るのは、相手の事情を聞いてから中身が決まる場面です。今どういう状態なのか、何から手をつけるか、いつまでにどこまでやるか。この部分は録っておけません。
流れにすると、動画を見て気になった人だけが個別の相談に進む形になります。全員に同じ説明をしていたときと違い、席に着いた時点で相手はもう中身を知っている。こちらから切り出すのは、御社の場合はどうしますか、という話からです。
線を引いたあとの商談は、説明が終わった状態から始まります。前半に使っていた時間が、そのまま相手の話を聞く時間になる。同じ長さの面談でも、進む距離が変わります。
撮る前に決める四つ
- 誰が話すか。社長が出るのか、説明の上手い人に任せるのか。出る人は当面変えないほうがいい
- どのくらいの長さにするか。先に決めておかないと、話しながらいくらでも伸びます
- 見終わった人に次に何をしてほしいか。面談の予約か、問い合わせか。一つに絞る
- どこで見せるか。案内の中に置くのか、面談の前に送っておくのか
抜けやすいのは三つ目です。見終わった人が次に何をすればいいのか分からないと、感想だけが返ってきて話が進みません。動画の出来より、見終わったあとの行き先のほうが結果を左右します。
見る人は「自分の会社で同じことができるか」を見ている
説明の動画を見せると、相手は中身だけでなく、その作りも見ています。順番が整っているか、画面に出す資料が揃っているか、話が途中で散らかっていないか。自分のところで同じものを用意できるだろうか、という目で見るからです。
だから、雑に作った部分を残さないほうがいい。あとで人に見せるとき、ここは適当に作ったところだと自分で分かってしまうと、勧める言葉に力が入らなくなります。
凝った編集の話ではありません。私が見るのは三つだけです。話す順番が決まっていること、画面に出すものが揃っていること、最後の案内が一つに絞られていること。一本目から満足のいくものはできませんから、使いながら気づいたところを直していく前提で作ります。机の上で仕上げようとするより、そのほうが早く形になります。
今いちばん多く繰り返している説明を、まず一本だけ録ってみてください。次の商談は、その説明を抜いたところから始められます。
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